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日本写真会 会報ダイジェスト 
2003−9・No.303
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●巻頭言 「富士山雑考」 同人 矢部 健
 この会には富士山を撮る人はあまりいないのかな──年度展の会場で耳を掠めたこぼれ話は中年の来観者仲間である。富士山マニアの写真愛好家か観光写団のグループだろうか。展示作品136点のなかに富士山を狙った作品が見当たらないのを訝るような真顔はビギナー風にも見えた。咄嗟に気軽くコミュニケートするポイントを考えたとき日本写真会にも大家が残した富士山の名作がある、と口にでかかったが、”光と其諧調”を完璧に具現した半世紀も前のモノクローム作品の格調をどう話したらわかるだろうか思案している間に一行は人の流れに紛れ去った。

 考えてみれば写真術が絵画に追随していた初期の頃必然的に誕生した絵画模倣主義は風景写真家が近代化した今日もまだその影響力を残しているが、絵画的写真に打って付けの被写体となった富士山は風景モデルの先駆者とも言えよう。”女性と花”の巨匠秋山庄太郎氏もかって静岡に住み、毎日富士山ばかり撮り続けていた一時期がある、と生前の手記に書き残されているが、カメラを手にして富士山撮影を経験しない日本人はあまりいないであろう。

 そのシンボリックな山容を無数のカメラに攻められ放題の富士山はマンネリ化した偶像の宿命を永久に背負うことになる。けれども、山頂からの日の出を眺めてダイヤモンド富士と宣伝している湖畔の地点に写真狂が三脚をがちゃつかせて群がる年二回の祭り騒ぎが定着しそうな機運もあり、また観光資料、商業広告の安価な汎用が景観に陳腐さをもたらすなどの経緯もあって、何時とはなく富士山志向から遠ざかってゆく写真愛好家も少なくない。その一方には富士山あってこその写真マニアと自負する頑固一徹居士やグループの数も各地に計りしれない。

 もとより日本写真会はネイチャーフォト団体ではないし、山岳写真クラブでもないので年度展に富士山が出品されたりされなかったりは自然の形と言えるが、何時かはクリエーティブな秀作が会員のなかから生まれるであろうことを期待する。そこで前期の名作の話題になるが、それは、昭和27年に同人展(同友制度が無かった頃)に出品された故熊沢磨二同人の「富士と石」という遺作にもなった一点である。おしなべて富士山は気流まかせの雲のたたずまいが風致にバリエーションをかもし出す。その前兆が現れると野心家たちは絶妙のタイミングを捉えようとカメラポジションを探し求め猛禽まがいの待機姿勢を構える。ところが撮影現地での熊沢同人は草原のど真ん中で雲一つない秋空を仰ぎ「これ天地玄黄。1/1割り算記号」と作画構想を予言されていた。その完成作品は空に雲がなかったことが幸いしたと思わせるようなディテールの生かし方の範例でもあるし、富士と帯状の低い山並、草原と黒い石の配列を単純化した造形的表現には耽美主義の脱皮を示唆する枯淡の風格があり、感銘を深めた印象は今も忘れられない。

 だからといって富士山志向を慫慂するつもりは毛頭ない。私自身眺める山としての愛着を持ちながら写欲喚起が容易に伴わない異端者でもあるから。しかし展覧会であれば一点くらいは富士山があっても、と思う観覧者感情の余話もちょっぴり参考にしながらせめて遺作にもなる一点は作って置こうと考えたりする愚老の頃日である。


●第76回展覧会開催
 ・会期:平成15年7月4日〜10日
 ・会場:富士フォトサロン(東京スキヤ橋)
 ・出品者136名、出品数430点
 ・入選者136名、入選数136点
 ・入賞作品
  福原信三賞 「多面多彩」    東京  佐藤 博
  福原路草賞 「雨滴」      東京  関口重男
  同友秀作  「霧に濡れる」   川崎  山本彬夫
  会長賞   「朝靄」      東京  小金井きよ子
  福原信和賞 「葦刈り」     東京  遠藤侑快
  特選    「新緑」      日立  田所源司
  特選    「竹取物語」    東京  井村奈加子
  準特選   「秋彩」      総社  角 陽子
  準特選   「光跡」      倉敷  星島孝雄
  優先    「幻想の夜」    東京  藤本淳子
  優先    「ブルーホール」  東京  小林一隆
  優先    「光翔」      日立  大内正純
  新人賞   「街角の小さい秋」 川崎  丸岡 孝
  奨励賞   「残照」      新発田 十ノ目昌宏
  奨励賞   「朝焼け」     久喜  酒巻伝蔵
  奨励賞   「異人館夢舞台」  宝塚  飯塚富郎

●2003−6月例会
 ◎「撮影会」入選作品(東京汐留、ゆりかもめ沿線:
  出品数61点 投票数4票)
 「安全ネット」   12票(内同人票6) 矢島得三
 「汐サイト」    11票(内同人票6) 真島昌一郎
 「ラセン階段」   10票(内同人票4) 矢島得三
 「或る視角」    10票(内同人票3) 丸岡 孝
 「亀裂」      10票(内同人票3) 神原武昌
 ◎「自由」入選作品 (出品数144点 投票数7票)
 「夜桜」      11票(内同人票4) 星島孝雄
 「静寂」      11票(内同人票3) 渡辺利正
 「朝の光」     10票(内同人票4) 山本彬夫

●2003−7月例会
 ◎「撮影会」入選作品(那須高原一帯:
  出品数63点 投票数4票)
 「新緑に誘われて  17票(内同人票8) 丸岡 孝
 「紅い花」     13票(内同人票7) 山本彬夫
 「山頂の棚」    12票(内同人票6) 藤本淳子
 「透かし構成」   12票(内同人票3) 今井保俊
 ◎「自由」入選作品 (出品数151点 投票数8票)
 「雨上がる」    15票(内同人票4) 真中 誠
 「朝の木道」    15票(内同人票4) 池田多聞
 「朝光の砂丘」   14票(内同人票7) 内藤 清
 「流れ」      14票(内同人票4) 内田 求
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