今からもう50年以上も前のことになります。昭和31年(1956年)、東京で写真展「ザ・ファミリー・オブ・マン」(われらみな、人間家族)が開催されまして。その後も日本各地を巡回し多数の観客に深い感銘を与えたとのことで、ご覧になられた方も多くいらっしゃることと思います。
その当時、私はまだ19才で、時折思いつくまま記念にシャッターを押していた頃のことで、特別写真に興味を持っていたわけでもありません。その写真展に是非行ってみたいと思った動機など今となっては、はっきり思い出せません。
当時の新聞広告に大きく掲載されたこと、好奇心もあり、また写真展のテーマも人類、人間家族、人間愛、等を対象としたもので何か興味を持てそうなテーマだったことなどをおぼろげながら覚えています。見過ごすとこんな写真展は二度と見ることができないかもしれないという思いがあったような気がします。
初めての写真展、会場に一歩足を踏み入れるとまず目に飛び込んできたのは、一見無造作に展示されと思われる作品の数々、それに4mから5mもある展示写真の大きさにまず圧倒され、度肝を抜かれる思いでした。しばらく茫然としていましたが次第に会場の雰囲気にも慣れ、落ち着いてきたのか、目の前の大きな写真に吸い込まれ、引きつけられるような感じがしました。
うっそうとした大きな森の中で一面敷き詰められたような草花の上に横たわる少女、映画の恋物語の一シーンを思い出させる数々の作品、出産シーンの強烈な印象、無邪気に遊ぶ子供の表情、働く人達、何代にも及ぶ大家族、老夫妻、そして訪れる人生の終末、等々、会場を何度も行ったり来たり、その時の衝撃的な感動は今も忘れることが出来ません。幸運なことに写真展が開かれてから38年経過した平成6年(1994年)に写真集「人間家族」が冨山房から刊行され、写真展では知り得なかったこと、また忘れてしまったこと等が再びよみがえり感激を新たにすることができました。
それによると写真展は「エドワード・スタイケン」が中心となり、プロもアマチュアも入った273人の写真家が68カ国で撮影したもので作品本位に選ばれていること等、外国紙の賛辞が引用されており、これは「人間の全歴史だ」、「さながら巨大な美しい叙事詩だ」、「これは人間の感情の普遍性をよく表している」と。
あの時のあの写真展の衝撃は今に語り継がれていると言われるのも、もっともなことと思います。
さて、私たちの日本写真会展も今年で82回を迎えました。因みに前掲の写真展が東京で開かれたその年に日本写真会展の第29回展が東京銀座松坂屋で開催されています。
当時私は日本写真会のことは知りませんでしたが今振り返って日本写真会の歴史と伝統に感慨をおぼえます。
今年の日本写真会展にも多数の方々に足を運んでいただきました。大変喜ばしいことです。作品の一つ一つに会員の方々のそれぞれの思いが込められており、来場された方がふと足を止めて共感を覚えていただけたらと思います。私も一会員として少しでも魅力ある作品つくりに努め、併せて日本写真会の一層の発展を願うものです。
●2009−7月例会
◎ 「本部撮影会」入選作品(古河市・渡良瀬遊水池:出品数71、投票数5票)
「波紋」 20票(内同人票13) 岩井滋行
「廃船」 17票(内同人票11) 三ッ山幸夫
「薄陽」 15票(内同人票9) 徳永 弘
◎「自由」入選作品 (出品数114点 投票数6票)
「夕照のとき」 21票(内同人13) 菱谷文雄
「自在鉤陰影」 12票(内同人7) 岩井滋行
「朝霧の湖」 9票(内同人4) 真中 誠
●2009−9月例会
◎「課題作品」入選作品(橋、ガラス:出品数114、投票数6票)
会長賞
「朝」 22票(内同人票14) 山田重夫
一席
「或るいざない」 12票(内同人票8) 岩井滋行
「ワイングラス」 12票(内同人票8) 中島 一
三席
「光跡」 7票(内同人票5) 小林一隆 |